色鉛筆画 F10号
2022年に開催された“第27回 日本の美術 ー全国選抜作家展ー”に出品して、
審査員特別賞を受賞した作品。
色鉛筆画を探求する上で、今後の制作方向が決まった大切な作品です。
その制作過程を簡単にご紹介します。
<完成品>
用紙をパネルに貼り込んだのち、3㎜方眼を描き、月明りの位置を決めてから1マスずつ色を塗り込む作業。夜の静かな空気の動きを表現できるよう、創造力をフル活動して塗り込んでゆく。方眼を引くのに2時間、部分的に方眼を塗り込み終えるまで、およそ12時間前後。
2. ちなみに、一番手前は夜霧。街と違って、山の霧は雲のように湧いて流れ広がってゆくと感じたか
ら。移住先の中山間部でも一番霧が深いと言われる地域に住んでいて、そのインプットがこの絵に
アウトプットされている。霧と月を避けつつ全体の着色を進める。1からここまでおよそ20時間。
3. 色を変えながら、月の周りの雲を描き残したり消したりしつつ何層にも色を重ねてゆく。色鉛筆に
とって筆圧は強弱をつける大切な要素。陰影でなく強弱で遠近感を作り出していると思うが、それ
は私が長く日本画を探求した時代があったからだと思う。余白を活かす古典的な日本画のレイアウ
トは私の中に根付いていて、良くも悪くも自分の美意識の在りかを実感した。
2からここまでで、60時間ほど。
4. 白い月の大きさが決まってきて、薄雲に映る光と淡い彩雲を描き始める。広がる月明りがいびつに
ならないよう、コンパスを使ってガイドを引きながら虹彩を描き進めるのだが、明るさを調整する
ために練ゴムで薄めたり描き起こしたりを繰り返す。これは手前の霧も同じ。8~9割ほど仕上が
ってきたと感じたところで、このあと2週間ほど作品を放置。仕上げに向けて、一旦忘れるのが私
の流儀(笑)
5. 月明りの光線を描き、仕上げに取り掛かりはじめる。色鉛筆画にとって、消しゴムは訂正するもの
ではなく、表現のための大切な画材と考えている。鉛筆や木炭デッサンと同じで、色鉛筆だけで描
く場合、白色は紙の色を活かすしかないから。太めに光線を作り、まわりを描き足しながら完成へ
向かう。
この作品が完成するまで、およそ1.5ヶ月。時間にして100時間くらいだろうか。25日間ほど毎日4時間は描くことになり、結構な作業量。8時間描き続けられる日もあれば、どうにも手が進まない・制作に没入できないこともある。そんな状況があっても1.5ヶ月で仕上げられたのは、展覧会に出品するという搬入期日があるから。期日を目標にして良い結果を出せることがあれば、それがネックになって残念な結果となることもある。幸い、前者となった作品です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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